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zoom RSS う〜ん、そりゃムリじゃないかな

<<   作成日時 : 2005/10/06 06:57   >>

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icon これまた新聞ネタですが、先日、朝日新聞のサイトに「大学1年の正答率4割弱、漢字能力調査 四字熟語1割台」という見出しで以下のような記事が出ていました。

 最近の大学生は漢字が苦手――。日本漢字能力検定協会が今春初めて実施した「漢字能力調査」でそんな実態が浮き彫りになった。大学1年生の正答率は39.8%で、同じ問題を解いた社会人は約6割。問題は異なるが中高生の正答率よりも低かった。大学生の国語能力の低下を裏付けた形で、勉強や就職への影響を心配し、対策に乗り出す大学も出始めた。

 大学生が特に苦手としているのは、「四字熟語の書き取り」や「誤字訂正」、「対義語・類義語」で、いずれも正答率は14.5%〜17.5%。「頂望」(正しくは眺望)や「廃規物」(廃棄物)といった誤字が見分けられず、「詳細」の対義語を「概略」と、「輸送」の類義語を「運搬」と答えられない。正答率が高かった「読み」でも62.7%、「熟語の構成」も56.5%だった。

 学力低下ということで、このような調査結果を持ち出したのでしょうが、これ、「できろ」と言う方にムリがあるんじゃないでしょうか。こんな問題出されたら、あたしだってたいしてできませんよ。あたしができないのなら、今の大学生にできるはずはないし、多くの社会人だっておそらくそうでしょう。
 朝日新聞のサイトでは、問題の一例として以下のような四字熟語の完成問題が出ていました。

大願○○ 同工○○ 周知○○ 安寧○○ 良風○○ ○○無二 ○○妄動 ○○千万 ○○玉条 ○○孤独

いかん いきょく きんか けいきょ じょうじゅ ちつじょ てってい てんがい びぞく ゆいいつ

 下の語群からあってるものを選び出し、それを漢字に直すだけですから、できて当たり前という考えなのかもしれませんが、ここに出された四字熟語の中で日常的に目にする語は、はたしてどれぐらいあるのでしょうか。小説などで用いられているものを考慮に入れても、「大願成就」「唯一無二」「軽挙妄動」「金科玉条」「天涯孤独」ぐらいでしょう。「同工異曲」なんて言葉はまず使われることはないし、この言葉、辞書を引いても正反対の意味が書いてあるぐらいです。
 「周知徹底」なんて、これ、四字熟語になっているんですか? 確かに、思い起こしてみれば「周知徹底させろ」といった言い方もありますが、その場合「周知、徹底」と間が空き、二字二字扱いじゃありませんか。実際、辞書を引いても、「周知徹底」で独立した項目は設けられていませんし。
 「安寧秩序」と「良風美俗」も、現在では死語です。
 そんな言葉を問題として出されたって、できないのは当たり前です。そうして、それをもって学力が低下しているというのは、行き過ぎです。こんなものは、単に知識を、しかも知っている必要性が低いものを問うているに過ぎません(こんな問題、大学生どころか、一般の社会人に出したって正解率は低い)。

 また、この漢字能力調査、出題形式にも問題があります。誤字訂正問題って、校正の仕事でもしているんじゃなければ、普段、誤字の訂正なんてことはまずしないでしょ。誤字を見つけ、それを訂正するって、結構難しいんです。意味が取れればそれで良しという心理的な制約がかかりがちですから(先日書いたホロン理論に従えば、意味を取るということの方が上位のホロンであり、そこから下位のホロンに意識を向けてゆくのには、一度、習慣化され無意識化されたものを再度意識化しなくてはならないため、困難が伴う)。
 そんな問題を出しておいて、正解率が低いって、それは出題者の側にも問題があります。確かに、正確に理解していれば、そんな問題にも苦労することはないかもしれません。しかし、そこまでのレヴェルの理解を求めるのはムリがあると思います。また、そこには出題形式に対する慣れも関わっているのですから、その結果をそのまま漢字への理解力に結びつけるのは早計でしょう(やっていないものは、できなくても当たり前)。
 対義語・類義語の問題に関しても、同様に問題があります。これも理解のレヴェルというよりは、そういう教わり方・覚え方をしてきたかということの方が重要になってきます。対義語や類義語を結びつけるような教わり方や覚え方をしてきていれば、この形式の問題を解くのは造作もないことでしょう。そういう記憶法、思考法に慣れていれば、そんなものは単なるクイズ問題でしかないのですから。
 もちろん、そんな問題でもできないよりはできた方が良いに越したことはありません。ですが、それは知っているかどうかを問うたクイズ問題に過ぎず、そこには慣れも関わっているということは考慮しておく必要があります。

 これは全体的な正解率になりますが、大学1年生が39.8%あったのに対し、同じ問題を解いた新卒社会人が60.7%という結果が出ています(朝日新聞では「社会人」となっているが、本当は「新卒社会人」)。新卒社会人の結果が高いのは、就職活動に際して、企業が行なう適性試験への対策をやっていたからでしょう。適性試験でも同様のクイズ問題が良く出てきますから。
 漢字の勉強をやって来たか否かということよりも、そうした出題形式に合わせた勉強をしてきたか否かということに左右されるような問題によって計られた結果を、そのまま理解力へと結びつけてしまうのは問題があるでしょう。四字熟語の知識を問う問題や(確かにこれも必要だと思うけど)、誤字訂正、対義語・類義語の書き取り問題を抜きにして、単に漢字の読み書きができたかどうか、まずはこちらの正解率を指標にすべきだと私は思います。

 それに、今回の「漢字能力調査」、どこが実施したのかと言えば、漢検を行なっている「日本漢字能力検定協会」です。しかも、その漢検の過去問を使っての調査。

 今春の調査に参加したのは、首都圏、関西圏、東海地区から無作為抽出された8365人。「日本漢字能力検定」(漢検)の過去問題を使い、中学1年生は5級(小学校卒業程度)、高校1年生は3級(同中学校)、大学1年生と新卒社会人は2級(同高校)に挑戦した。正答率は中学生が78.5%、高校生が59%、社会人が60.7%。大学生の成績の悪さが際だっている。

 朝日新聞は以上のように報じていますが、違う試験問題を使ったら比較対象にはなりません。ですから、「大学生の成績の悪さが際だっている」というのは、同じ問題を解いた社会人(実際には「新卒社会人」)との比較においてのこととしなければなりません。
 それ以前に、漢検の問題を使ったんじゃ、できなくても仕方がありません。「漢字能力検定」となっていても、あれは「能力」というより漢字の「知識」を問うための検定試験、テレビ東京の「TVチャンピオン」みたいなものです。その2級の問題を出されたんじゃ、正解率が高くなくても不思議はありません。

 以前、予備校の講師をしていたときに漢検の資料を取り寄せたのですが、その問題を見てみるとこれが難しい。2級は一応「小学校・中学校・高等学校で学習する常用漢字を理解し、文章の中で適切に使えるようにする。 人名用漢字も読めるようにする」となっていますが、その問題はここまで書いてきたように、単なる漢字の読み書きではなく知識面重視、部首名などの問題も出てきて、「常用漢字を理解し、文章の中で適切に使えるようにする」という程度からは逸脱しています。
 そのため、2級の問題でもかなり難しい、と言うか、知らなければ「はい、それまでよ」という問題が多いです。準1級や1級ともなると、日常生活ではまずお目にかからないようなレヴェルの漢字が出てくるので、ホント、「TVチャンピオン」です。
 ああいう問題ができるということは、確かに漢字に関する知識はあるということになるのでしょう。ただ、それが「文章の中で適切に使える」ということに直結するかと言えば、答えは否です。
 部首名なんか知らなくても文章の読み書きはできますし、死語やそれに近い言葉を知っていたところで、そんな言葉を使う機会はほとんどありません。類義語や対義語だって、とっさにそれを思い出す必要があるのは、言葉に携わる仕事をしている人ぐらいなものです。それ以外の場合は、とっさに類義語や対義語が思い浮かばずとも、個々の言葉の意味を知っていれば、それで文章の読み書きはこと足ります。

 知識はあるに越したことはありませんが、「そこまでは必要ないんじゃないの」というのがあるのも確かです。漢検の試験は知識面重視で、確かにそれに合格するのは漢字の知識があることを示していますが、それだけのことです。反対に、漢検の試験ができなかったからと言って、漢字の知識は不足しているとは言えても、漢字の理解力が不足しているとは必ずしも言えません。あの出題形式で計れるのは、あくまでも知識であり、そうした形式に慣れているかどうかですから。
 そのため、今回の漢字能力調査に関しても、その正解率をもって安易に学力低下ということにつなげてしまうのは早計です。
 もっとも、大学生は全体的にデキが悪いのは確かであり、肝心の漢字の読み書きについても、読みは何とかといったところで、書き取りはかなり怪しいというありさまです。たとえ朝日新聞の取り上げ方はおかしいにしても、これじゃ、学力低下をうんぬんされたとしても仕方がないですね。
 なお、今回の調査における分野別の正答率は以下の通りです。

【分野別正解率】
大学一年生       新卒社会人
62.7%----------読み----------80.7%
50.0%----------部首----------49.0%
56.5%-------熟語の構成-------74.5%
14.5%----四字熟語書き取り----37.5%
45.0%------四字熟語意味------68.0%
17.5%-----類義語・対義語-----44.5%
20.5%-----同音・同訓異字-----52.0%
17.5%--------誤字訂正--------42.0%
34.0%-----漢字と送り仮名-----58.0%
32.6%--------書き取り--------57.0%
2005年「漢字能力調査」結果の概要(PDF:61.5KB)より>

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