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zoom RSS やっちゃったもん勝ち

<<   作成日時 : 2008/01/09 23:58   >>

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icon 先日、06年8月に福岡市で起きた幼児3人が死亡した飲酒運転事故の一審判決が、福岡地裁によって下されました。判決は、罪状として問われていた危険運転致死傷罪ではなく、業務上過失致死傷罪と道交法違反が適用され、懲役7年6カ月でした。

 福岡市東区で06年8月、幼児3人が死亡した飲酒運転事故で、危険運転致死傷罪と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われ、懲役25年を求刑されていた元同市職員・今林大(ふとし)被告(23)の判決公判が8日、福岡地裁であった。川口宰護(しょうご)裁判長は危険運転致死傷罪の成立を否定したうえで、予備的訴因として追加された業務上過失致死傷罪などを適用。業務上過失致死傷と道交法違反の組み合わせでは最高刑に当たる懲役7年6カ月を言い渡した。

 すでに新聞やニュースで報道されているように、危険運転致死傷罪ではなく、業務上過失致死傷罪となったのは、危険運転致死傷罪の要件である「酒の影響で正常な運転が困難な状態」に関して、「正常な運転ができない可能性がある状態では足りず、現実に道路・交通状況に応じた運転操作が困難な心身状態にあることが必要」とされたためです。
 危険運転致死傷罪に関しては、成立したことは知っていましたが、その詳しい内容までは知らず、この判決に関するニュースを見たあと、「何それ?」となって、Wikipediaの該当項目を見てみました。

 いや、ひどいもんですね。テレビのニュース番組でも法律学者がコメントしていましたが、危険運転致死傷罪は構成要件のハードルが高く、よほどのことでないとその罪に問えないというザル法。飲酒運転に対する厳罰化という機運から刑法に加えられた罪状ですが、これじゃ、厳罰化どころではありません。
 Wikipediaを見ると、構成要件には大きく分けて4つあり、「スピードの出しすぎ・制御技能の欠缺(けんけつ、無免許運転など)」「割り込み・幅寄せなどの妨害」「信号無視」、そうして問題の「飲酒や薬物による酔っ払い運転」です。
 Wikipediaの「飲酒や薬物による酔っ払い運転」の項目には以下のように書いてあります。

「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者」(刑法第208条の2第1項前段)
本条文における「薬物」とは、麻薬・覚せい剤などの違法な薬物だけでなく、精神安定剤や解熱剤などの市販されている医薬品・処方箋も含まれる。
道路交通法の酒酔い運転罪の規定(同法117条の2第1号)にいう、「正常な運転ができないおそれがある状態」では足りず、現実に前方注視やハンドル、ブレーキ等の操作が困難な状態であることを指す。

 福岡市における飲酒運転の事件に対する福岡地裁の判決は、引用箇所の最終行にある要素をもって、危険運転致死傷罪には当たらずとしており、その根拠は以下のようなものでした。

 そのうえで本件を検討。被告の飲酒量については検察側の主張通り、自宅や居酒屋、スナックで缶ビール1本と焼酎のロック8〜9杯、ブランデーの水割り数杯を飲んだと認定した。が、事故後の飲酒検知は呼気1リットルあたり0.25ミリグラムで酒気帯び程度だったことなどから「泥酔状態」との検察側主張を退けた。

 そして「被告はスナックから現場まで約8分間、普通に右左折やカーブ走行を繰り返し、蛇行運転などの事実は認められない。事故直前も衝突回避措置を講じており、正常な運転が困難な状態にはなかったと強く推認される」と述べ、故意犯である危険運転致死傷罪の成立を否定。事故原因を脇見運転と認定したうえで、「過失程度の大きさ、結果の重大性、酒気帯び運転とひき逃げの悪質性から、刑の上限に当たる7年6カ月が相当」と量刑理由を述べた。

 川口裁判長は、今林被告が運転を始めた時、「酒に酔った状態にあったことは明らか」としながらも、〈1〉スナックから事故現場まで蛇行運転や居眠り運転をせず、衝突事故も起こさなかった〈2〉事故直前、被害者の車を発見して急ブレーキをかけ、ハンドルを切った――ことなどを重視し、「アルコールの影響により、正常な運転が困難な状態にあったと認めることはできない」と判断した。

 ここで言う「正常な運転」とは、いったいどういうものなのでしょうね。
 検察側の主張にも

 検察側は(1)居酒屋の店員に「酔うとります」と言った(2)現場直前の交差点を大きくふくらみながら左折(3)見通しのよい直線道路なのに約12メートル手前まで被害車両に気付かなかった、などを挙げ、「被告は正常な運転が困難な状態にあり、かつ、その認識があったのは明らか」と訴えていた。

 とあり、ここでも「正常な運転」という文言が出て来ます。

 Wikipediaの危険運転致死傷罪の項目や、これら新聞報道、そうして福岡地裁での判決からすると、たとえ飲酒運転であっても、泥酔にまで至っていなければ「正常な運転」は可能であると読めます。こんなおかしな法律がありますか。これじゃ、飲酒運転に対する厳罰化どころか、飲酒運転を黙認しているようなものです。
 要はバレなきゃイイ、事故を起こさなきゃイイ。仮に事故を起こしたとしても、泥酔状態でなければ、「正常な運転」が困難とは考えられず、「過失」の範囲内で済む。実に見事なザル法です。

 どうしてこんなザル法が成立したんでしょうね。元々飲酒運転に対する厳罰化というのはただのポーズで、はじめから厳しくするつもりはなかったのか、それとも、元は厳しくなるはずであったものが成立過程でぐだぐだにさせられ、こうなってしまったのか。
 いずれにしても、危険運転致死傷罪はよほど逸脱した飲酒運転でない限りは、罪に問いにくいものであるという現実だけは確かです。

 元々、日本は酒に対して寛容な文化をもっており、「無礼講」という言葉に代表されるように、酒の席の上での羽目をはずした振る舞いは大目に見られがちです。宴席ではそれもある程度は許されるでしょう。しかし、車を運転するとなれば話は別です。
 飲酒をしていなくても、一瞬の判断ミス、行動の遅れなどで、平気で事故は起きます(先日書いた事故だって、前方不注意であるのは明らか)。注意して運転していても、それでも事故は起きます。
 酒に対して不寛容な私からすれば、そもそも酒気帯び運転と飲酒運転の区別があること、そのこと自体に対しても疑問を感じずにはおれません。幸いにして事故を起こさず検問に引っ掛かって見つかってしまったという段階に留まっているのなら、それもイイでしょう。しかし、事故はいつ起きるかわからないのです。
 血中にアルコールが入っていれば、判断に遅れも出れば、反応速度も遅れます。酒気帯びであるか、飲酒であるかなどというのは、アルコール残留量の程度の差でしかありません。その程度の差がどうであろうと、アルコールの入っていない覚醒レヴェルでの状態に比べれば、判断力も反応も鈍化しています。
 正常な覚醒意識レヴェルであっても、ほんの一瞬のミスで事故を起こしてしまうときがあるのですから、アルコールが入っていたらなおさらです。酒を飲んで運転をした時点で、平常時に比べ、事故を起こす可能性は高くなっているのです。
 ですから、酒気帯びのレヴェルであろうが、飲酒のレヴェルであろうが、アルコールが入った状態で起こした事故は、起こすべくして起こした事故です。判断力も鈍り、反応速度も遅れている状態で運転をし、それで起こした事故がどうして「過失」となるのか。危険運転致死傷罪という法律以前に、アルコールに対する認識が甘すぎるんじゃないか、あらためてそう思います。

 しかし、今回の福岡地裁の判決は、判例として大きな禍根を残しそうですね。元の法律がザルであるとはいえ、飲酒後に死傷事故を起こしても「やっちゃった」で済ませられるという前例をつくってしまったんですから。
 泥酔状態でなければ「過失」で済む可能性が高いということはすでに書きましたけど、たとえ泥酔状態であっても、時間稼ぎをし、血中アルコール濃度を下げられれば、やっちゃったもん勝ち。弁護士の腕が良ければ、そうやって飲酒の隠蔽工作をしたことも「正常な判断」ができていたことの証明にもなる。「飲酒運転で罪が重くなることが怖かった」というのは、罪人としては実にマトモな反応です。
 こうしたことを考えると、飲酒運転を黙認している危険運転致死傷罪に加え、裁判所までが飲酒運転による事故は例外を除きほとんどが「過失」であるとしてしまったことは、酒を飲んで事故を起こした場合には「とにかく逃げろ」が暗黙の了解として広まるような事態を招きかねないと私は危惧しています。

 と、この文書を書くために読売新聞のサイトを見ていたら、「酒気帯びで追突事故、海自隊員を逮捕…女性2人けが」ですって。
 「とにかく逃げろ」とはならなかったようですが、昨日の今日でこの事件、福岡での判決前に起こったとは言え、「どうして自分が事故を起こすと考えられないのか」とあきれる他ありません(しかも自衛隊員、日本は防衛以前に内部から瓦解してゆくな)。

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危険運転致死傷罪
さてさて今日のニュースでのことですが福岡で3児死亡した痛ましい事故がありましたよね。あの判決が出たわけですが... ...続きを見る
ようちゃんの日記
2008/01/20 02:29

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